福祉と地域を結ぶクラフトビール 下関「うついブルワリー」
- グルメ
下関市長門線・県道34号線、内日(うつい)地区の澄んだ大自然の空気の中に、ひっそりと佇むクラフトビール醸造所「うついブルワリー」(山口県下関市大字内日下1076)があります。
落ち着いた深みのあるレッドカラーの建物に、大きな醸造タンク。ここでは、障がいのある方の仕事づくりと地域とのつながりを大切にしながら、自家製クラフトビールが造られています。

福祉を特別なものとして切り離すのではなく、地域の中に自然に溶け込む仕事として育てていきたい。そんな想いから生まれたのが、「うついブルワリー」です。
今回は、クラフトビール造りにたどり着いた背景や、地域とともに歩む取り組み、そして内日の恵みを活かしたビールの魅力について伺いました。
内日の地から生まれるクラフトビール
街中の喧騒から離れ、ゆっくりとクラフトビールを楽しめるこのロケーションは、まるで秘密基地のよう。
醸造責任者の友村さんは、うついブルワリーを立ち上げた当時、建物は福祉感を一切感じさせないデザインにしようと考えたといいます。

このタップルームでは、できたてのクラフトビールを味わうことができます。少し特別な時間を過ごせる場所です。
オープンは現在、毎月2日程度土曜日11:00~15:00まで営業。タップルームオープン時には、賑わいの場所へと変化します。

落ち着いたカラーでまとめられた、おしゃれな建物の中。
壮観な自然に囲まれ、開放感のある、少し大人なひとときを過ごせる空間です。
4月に取材に伺った際は、建物内にうぐいすの鳴き声が響き渡っていました。ほかにはほとんど音がなく、静かな環境の中でゆったりと過ごせます。
利用者さんと造り上げるクラフトビール
2023年4月に醸造免許を取得し、同年6月に販売を開始しました。
「うついブルワリー」という名前で展開していますが、運営母体は障害福祉作業所「グリーンファーム」です。
クラフトビールの販売を開始する前は、お米や野菜、お花など農業に力を入れてきました。
ただ、農業だけでは障がいのある方の収入に限りがあるため、外勤作業も開始。
草刈りや草集め、掃除など、外に出て行う仕事を少しずつ増やしていったそうです。
外勤作業は収入面では大きいものの、年齢や働き方の面から、一般企業への就職が難しい方もいます。
そうした中で、新たな働く場としてたどり着いたのが醸造所でした。
その中で「ホップという珍しいものを作れば売れるのではないか?」と考えたことが、クラフトビール作りの原点になったと友村さんは語ります。
当時、全国的に見ても、社会福祉法人でクラフトビールを造っているところは、まだ片手で数えられるほどだったそうです。
クラフトビールの原料となるホップは、うついブルワリー・グリーンファームの農地で、利用者さんと一緒に育てたものを使用しています。
内日という土地で、自分たちで育てたお米やホップを原料にしたビール造りに取り組みながら、地域の活性化にもつなげています。
地域に溶け込む社会参加の形

製造は、醸造責任者である友村さんが担当。
ラベル貼りや梱包、瓶詰作業、店舗内清掃、ブルワリー敷地及びホップ圃場管理、イベント時の接客などは、利用者さんやグリーンファームの職員さんとともに行っています。
障がいのある方が作るものや行う作業は、低く見られてしまうのではないか。
みなさんに受け入れてもらえるだろうか。
きちんとした製造ができるのだろうか。
味に対して不安を持たれるのではないか。
そんな悩みや不安を抱えていたと、友村さんは振り返ります。
だからこそ大切にしているのが、「品質で選んでもらえるものを作ること」です。
どうすればより多くの人に手に取ってもらえるのかを考え、通信販売を始めたり、市内のイベントに30回参加したり、市内のお店に商品を置いてもらったりと、さまざまな取り組みを続けています。
内日の恵みをたっぷりと含んだホップ栽培

建物のすぐ横には、ホップのほ場があります。
取材に伺った4月上旬は、株から芽が出始めたばかりでした。

これから梅雨の時期にかけて、紐を伝うほどの高さまで成長し、夏には収穫できるそうです。
2026年6月で3周年を迎えるうついブルワリーは、5月に感謝祭を開催予定。
現地でビールを楽しみたい方は、Instagramでの告知をチェックしてみてはいかがでしょうか。
ギフトにも嬉しい!洗練されたクラフトビール

ポップなカラーが目を引く、洗練されたラベルデザイン。
ビールのブランド名は『VACAN CRAFT』です。
『VACAN』は、下関の古称「馬関」に由来しており、馬のデザインがベースになっています。
デザイナーさんや施工者さんと一緒に、福祉施設らしさを一切感じさせない仕上がりにこだわったそうです。
現在は、01〜06までの6種類を販売。
ホップを多く使っているのが特徴で、しっかりとしたのどごしや苦味が感じられます。
クラフトビールが初めての方には、01〜03から試してみるのがおすすめとのこと。
泡立ちや苦味、のどごし、香りはそれぞれ異なり、飲み比べも楽しめます。個人的には、香りが際立つ03 IPAや06 DIPAが印象に残りました。

02のヴァイツェンは、ドイツ産・イギリス産麦芽を使い、仕込み水には地元・下関の水を使用。
バナナのような香りがあり、苦味とのどごしもしっかり感じられます。6種類の中では、もっともベーシックで親しみやすい味わいに感じました。

03のIPAは、02よりもさらに香り立ちが豊かで、味わいもフルーティー。
不思議な奥行きがあり、確かめるように何度も口に運びたくなる一杯でした。

06 DIPAは、6種類の中で最もアルコール度数が高い7%。
ひと口目からしっかりとした苦味とのどごしが感じられ、口の中に余韻が広がります。お酒好きの方には、ぜひ試してみてほしい一品です。
できたてを味わいたい方には、タップルームでの現地飲みがおすすめです。
タップルーム開放時には、周年祭などイベント時のみキッチンカーが利用できます。通常営業時は、フードの持ち込みが可能です。

支払いは電子マネーやクレジットカードにも対応しているため、利用しやすいのもうれしいポイント。
レジ横には、クラフトビールのラインナップのほか、もち米、うついブルワリーのキャップ、「ビール王国」の雑誌、ラベルデザインを手がけたデザイナーさんの作品も並びます。
大自然の中で味わうできたてのクラフトビールは、きっと特別なひとときになるはずです。
福祉活動と地域を結ぶ友村さんの想い

「弟の存在がなかったら、今はなかったと思います」と友村さんは語ります。
障がいがあるからといって、可能性を閉ざしてしまうのはもったいない。
障がいのある方も地域貢献に関われる環境をつくっていくことが、友村さんの想いであり、信念でもあります。
福祉を特別なものにしない。
地域の中に自然に溶け込む仕事をつくることが、「うついブルワリー」の原点です。





