北欧の風土を映したコレクション!萩市「フィンランド・グラスアート展」
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※本イベントは終了いたしました。
9月16日(土)から、萩市の山口県立萩美術館・浦上記念館では、特別展示「フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン」がスタート。
森や湖といった豊かな自然に恵まれた北欧の国・フィンランドは、夜空を彩るオーロラや、サンタクロースの故郷といったイメージの浮かぶ場所。街で見かける北欧テイストのインテリアや雑貨からは、素材を生かしたシンプルでナチュラルなものが多く、どこか温かみのある雰囲気が感じられます。
今回は、そうした北欧の風土を反映したフィンランド作家たちの作品が集まるという、展覧会の模様をお届けします。
フィンランド・グラスアートのはじまり
美術館に入ると、まず目に留まったのは大きなパネル。本展の「顔」とも呼べる、アルヴァ&アイノ・アアルトの作品「アアルト・フラワー」が描かれています。
波打つような輪郭で描かれた「花」のデザインに、鮮やかで涼しさを感じさせるグラデーション。ガラスでないと表現できない世界観にワクワクしながら、階段を上がって2階の展示室へ向かいます。
展示室は3つの「章」で構成され、第1章は「フィンランド・グラスアートの台頭」。
1917年にロシアから独立したフィンランドでは、ガラス製作の分野でも、新しいものを取り入れていくモダニズムが推進されてきたそう。
1930年代に入ると、ミラノ・トリエンナーレや万国博覧会への参加に向けて、国内でコンペティションが多く開催され、優秀なデザイナーが台頭するきっかけとなりました。
まずは、そうしたモダンデザインのパイオニアとなった、アルヴァ&アイノ・アアルトと、グンネル・ニューマンの作品が中心。
フィンランドにある湖の形や、白樺の木の断面などがモチーフといわれるアルヴァ&アイノ・アアルトの作品は、北欧を代表する老舗テーブルウェアブランド「イッタラ」の製品として、現在も世界中で愛されています。
グンネル・ニューマンは、ガラスという素材の特性に着目したデザイナー。
単純化されたデザインに、独特の気泡を生み出す吹きガラスの手法を生かし、見る人によって印象が変わるような、ガラスならではの作品が並びます。
タペストリーに大きく描かれた、デザイナーの表情や製作風景にも目を向けながら、会場の奥へと進んでいきます。
花器や皿からオブジェへ
第2章「黄金期の巨匠たち」でスポットが当てられたのは、カイ・フランク、タピオ・ヴィルッカラ、ティモ・サルパネヴァ、オイヴァ・トイッカの4人のデザイナー。
第二次世界大戦を経て迎えた1950年代、ガラス製品のデザインは、フィンランドを象徴するアイデンティティを構築し、国際社会において国を立て直していくための大事な要素になったといいます。
フィンランド・グラスアートにおいて「黄金期」と呼ばれるこの時代には、より高級志向の強い「アートグラス」や、一点ものの作品「ユニークピース」が注目されるように。デザイナーが職人と協働で作り上げた独自性の高い作品は、第1章の展示を彩った花器や皿から離れ、より芸術性の高い「オブジェ」に近づいてきたように感じます。
伝統技術に学び、創意工夫を重ねる
そして、第3章は「フィンランド・グラスアートの今」。
グローバル化が進む中で、老舗のガラス製作所もデザイナーを外部から招聘するようになった現在も、精力的に活動する2人のデザイナーにスポットが当てられています。
マルック・サロは、これまでに見てきた作品とは一線を画すような、金属製のメッシュにガラスが吹き込まれたシリーズがずらり。
ヴェネチアン・グラスの製造における確かな技術を持つヨーナス・ラークソは、自身の生活や若者のカルチャーなど、身近で親しみのあるものをモチーフとした作品が中心です。
「これ、本当にガラスでできているの?」
ユーモラスなシルエットとポップな色合いは、来館者から思わずそんな声が上がるほど。
伝統技術に創意工夫を重ね、たどり着いたとされる独自のアプローチは、また新しい時代の到来を感じさせてくれます。
心温まるムーミンの世界
※本イベントは終了いたしました。
陶芸館1階の展示室で出迎えてくれたのは、フィンランドで生まれた「ムーミン」と仲間たち。
同時開催の展覧会「ムーミンの食卓とコンヴィヴィアル展」の入口です。
「ごちそう」や「共生」などを意味する言葉「コンヴィヴィアル」をテーマに、豊かな自然に寄り添いながら生きるムーミンの世界観に触れる展覧会です。
原画やフィギュアなどで表現された、四季の食べものを仲間とともに楽しむムーミンの姿。慌ただしい毎日の中で忘れていた、ゆっくりとした時間が流れるような風景に、ぽっと心が温かくなります。
北欧雑貨をお土産に!今だけのミュージアムショップ
1階のミュージアムショップでは、このたびの会期に合わせてスペースを拡張。
ポストカードやクリアファイル、展示作品をより深く楽しめる図録をはじめ、北欧の温かさを感じるテーブルウェアがショップを彩っています。
以前から目にしてきたイッタラのグラスも、これまで歩んできた歴史や背景を知ると特別な品に見えてくるもの。
グラスアートを通じて、遠い北欧の国だったフィンランドが身近に感じられるひとときを、ぜひ山口県立萩美術館・浦上記念館でお楽しみください。