穏やかな島で歴史と平和を噛みしめる 周南市「大津島」
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瀬戸内海にそっと浮かぶ大津島は、戦争の記憶を今に伝える「回天遺構」と、心安らぐ自然が調和する島です。
山口県・徳山下松港から船で約30分。短い航路の先には、静寂に包まれた非日常の風景が広がっています。
回天記念館やトンネル跡といった歴史の学びだけでなく、フォトジェニックなピンクのドアなど見どころも豊富。
本記事では、大津島でしか味わえない「癒しと記憶」の旅をご紹介します。
港からはじまる非日常の旅。徳山港から大津島へ
大津島へは山口県・周南市にある「徳山下松港」からフェリーに乗って向かいます。
船に乗っておよそ30分。街のにぎわいから離れ、静けさに包まれる時間がゆっくりと流れはじめます。
瀬戸内のやさしい海を、船のデッキからゆったりと眺める時間。風と光に包まれて、心がふっとほどけていきます。
きらきらと陽を反射する海面、おだやかに波打つ入り江、静かに佇む漁船や住宅。
都会では見られない、静かであたたかい「島のくらし」を肌で感じられます。
大津島に降り立つと、真っ先に感じるのは時間の流れのゆるやかさ。
透き通る空、深い青の海、そして記憶をそっと抱くような空気が、訪れる人をやさしく包んでくれます。
写真映え必至!大津島のフォトスポット「ピンクのドア」
島内で特に目を引く存在が、木陰にぽつんとたたずむ「ピンクのドア」です。
まるでどこかへ通じるかのように佇むこの扉は、異世界の入り口のような雰囲気を漂わせています。
ひとりで立っても、誰かと並んでも、まるで物語の一場面のような写真が残せます。大津島のフォトジェニックな名所として訪れてみましょう。
静かに佇む回天記念館で過去と向き合う
大津島には、かつて人間魚雷「回天」の訓練基地が設けられていました。
現在も「回天記念館」が残され、訪れる人々に当時の記憶を伝え続けています。
館内には、回天の実物模型や搭乗員の遺影、直筆の遺書、当時の資料が整然と展示されています。
展示の前に立つと、言葉を失うほどの重さが胸に響いてきます。
回天記念館に展示された資料の背景には、命をかけて国のために戦おうとした若者たちの葛藤が見て取れます。
戦後80年を迎える今年、この記念館で過ごすひとときは、今を生きる私たちにとって、平和の意味を見つめ直す機会になるでしょう。
回天運搬用トンネルに残る訓練の記憶
記念館からさらに歩みを進めると、ひんやりとしたコンクリートの長いトンネルが姿を見せます。このトンネルは、かつて回天の運搬に使われていた通路です。
ひんやりとした空気の中に、張り詰めたような緊張感が漂っています。
壁に残された無数の痕跡と、照明に照らされたコンクリートの質感が、かつての記憶を静かに伝えてきます。
歩いているだけで、自然と背筋が伸び、心が静まっていく。ここには、そんな空気が漂っています。
静寂に包まれた回天訓練基地跡を歩く
トンネルを抜けた先には、海に面して佇む「回天訓練基地跡」が広がっています。
今もなお残る無骨なコンクリートの建物に立つと、当時の厳しさが胸に迫ってきます。
波の音が静かに響く中、サビた鉄柵やむき出しの床が、ここで行われていた実戦さながらの訓練を物語ります。
案内板に目をとおしながら、命をかけた若者たちの想いに思いを馳せると「観光」という枠には収まりきらない深い体験が心に刻まれるはずです。
自然と歴史がやさしく交わる大津島
大津島の魅力は、回天にまつわる歴史だけではありません。
海の透明度、なだらかな山々、静かな集落など、心を癒してくれる風景が島中に広がっています。
歴史をたどる途中で見上げた瀬戸内の青い海は、どこまでもおだやかで、やさしく包み込んでくれました。
過去と静かに向き合ったからこそ、いま目の前に広がる平和の風景が、よりいっそう尊く思えてきます。
歴史が息づく大津島の静かな風景は、過去を感じると同時に、今という時間を丁寧に過ごすことの大切さを教えてくれます。
心に深く残る旅を求めている方にとって、大津島はきっと忘れられない場所になるはずです。