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古民家を未来へつなぐ一棟貸し 山口市「かんぬしの宿」

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山口市中心部から車で約30分。田んぼと山に囲まれた静かな里山に、2026年3月、小さな宿がオープンしました。かつて神主が暮らしていた古民家を、自らの手でよみがえらせた一棟貸しの宿「かんぬしの宿」(山口県山口市阿東篠目1013)。
観光地を巡る旅とは少し違う、阿東の暮らしにふれる滞在を楽しんでみたい人にぴったりの場所です。

【写真はこちら】宿の雰囲気を細かくチェック!

古民家を未来へつなごうとする挑戦とともに取材しました。

近くにある細野神社

 

神主の住まいだった古民家

篠目駅から歩いて約6分。
田んぼの間の道をゆっくり進んでいくと、一軒の古民家が見えてきます。2026年3月にオープンした「かんぬしの宿」です。

その名の通り、この家は、近くにある細野神社の神主がかつて暮らしていた住まいでした。
しばらく空き家になっていたこの家に、もう一度あかりが灯りました。

灯の点ったかんぬしの宿(廣田さん提供)

 

DIYでよみがえった家

この宿を運営しているのは、元地域おこし協力隊員で、「みんなの古民家創生舎」を主宰する廣田和也さんです。
古民家の改修は、床板の張り替えや断熱材入れ、シロアリ対策まで、すべて廣田さん自身の手で進めてきました。

下関市出身の廣田さんは、一度山口を離れたあと、2022年7月に阿東地域の地域おこし協力隊として山口県へJターン。
前職はメカニカルデザインで、もともと手先が器用でDIYが趣味だったこともあり、古民家の再生には以前から関心があったそうです。

リノベーション中(廣田さん提供)

改修作業の中でも特に苦労したのが、手洗いの水道まわり。
水漏れがなかなか止まらず、何度もやり直すことになったといいます。
その奮闘の様子をSNSに投稿したところ、動画は7万6000回以上再生され、思いがけず多くの反響を集めました。

観光ではなく「暮らし」を知る場所

「価値のある古民家を一軒でも多く残したい」
地域おこし協力隊として活動する中で、廣田さんが強く感じたのが空き家の問題でした。
その思いから始めたのが、この民泊です。

「かんぬしの宿」は、観光の拠点というより、阿東の暮らしを体験するための場所。
実際に滞在し、地域の空気や時間の流れにふれてもらうことで、将来の移住や地域との関わりにつながるかもしれないという思いが込められています。

宿は一棟貸しで、最大8名まで宿泊可能。
客室が2部屋、居間、ダイニングキッチン、縁側、バス、トイレがそろっています。
キッチンには冷蔵庫や食器、調理器具のほか、コーヒーメーカー、電子レンジ、ホットプレートもあり、家族や仲間とゆっくり食事を楽しむこともできます。

6畳の客室、床の間の兜や日本人形は海外からのゲストに喜ばれています

どこか懐かしい空間で過ごしていると、まるで田舎の家に帰ってきたような気持ちになるかもしれません。

 

30分で出会える里山の時間

篠目地区は、阿東の中でも比較的山口市中心部に近く、車で約30分。
少し足をのばすだけで、田んぼが広がる風景と、ゆったりとした静かな時間の流れに出会えます。

5月末から6月にかけては、宿の前を流れる篠目川でホタルが舞うそうです。
夜になると、川沿いに小さな光が揺れ、幻想的な風景が広がります。

また、週末には観光列車「SLやまぐち号」を見られることも。
蒸気を上げながらゆっくりと走る黒い機関車は、この地域ならではの景色のひとつです。

 

人が集まる場所をつくる

「かんぬしの宿」は、泊まるだけの場所ではありません。
昼間はイベントスペースとして利用することもでき、5月31日には「一箱古本市」も開催。地域の人や、この場所を訪れるきっかけづくりにも取り組んでいます。

さらに、敷地内の蔵を改修してブックカフェをつくる計画や、コミュニティガーデンづくりも進行中。
こうした活動のひとつひとつも、廣田さんの目標につながっています。

「価値のある古民家を一軒でも多く残したい」

古民家に関わる入口をいくつもつくり、そのどこかに興味を持った人が宿を訪れる。
いまはその“種まき”の途中なのだと、廣田さんは話します。

古民家の未来をつくる小さな一歩

総務省の「令和5年(2023年)住宅・土地統計調査」によると、山口県の空き家は約14万700戸。そのうち約6割が放置されているといいます。
空き家バンクに登録できるのは、条件を満たした状態の良い物件のみで、実際には老朽化や所有者の事情などによって、手が付けられないまま残されている家も多くあります。

そうした課題に向き合いながら、一歩を踏み出した廣田さん。
宅地建物取引士の資格も持っていて、移住や住まいに関する相談にも対応しているそうです。

 

里山の一軒の古民家から

静かな里山にある、一軒の古民家。
そこから始まった小さな宿づくりは、人が訪れ、地域の暮らしにふれ、また誰かに伝えていく。そんな循環を少しずつ生み出しています。

「かんぬしの宿」は、古民家を未来へつないでいくための、新しい試みのひとつ。
次の休日、阿東の空気を感じに出かけてみてはいかがでしょうか。

※お知らせ
7月4日には、かんぬしの宿初めてのライブを行います。詳細はSNSにて。

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