老舗が切り拓く新たな和菓子の旅 山口市「山口風月堂」
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素材にこだわり、心にも体にも優しい。
今回はそんな伝統ある和菓子の世界をご案内します。
明治30年創業
山口市の歴史ある町並み、下竪小路にある「山口風月堂」。
1897年(明治30年)創業の老舗の和菓子店です。
店内のケースの中には彩り豊かなお菓子が並んでいます。
創業当時から作り続けられている、夏みかんのマーマレード餡が入った『毛利公』、
大内氏の家紋をかたどった『大内山』、
淡雪と抹茶羊羹をマーブル模様に仕上げた『大理石』のほか、
伝統的な上生菓子は、季節によって6~7種類取り揃えられています。
6月は梅の実や紫陽花を模したお菓子や、水無月など、薯蕷(じょうよう)饅頭もこの時季には蛍仕様になるそうです。
季節を先取りし、見た目も涼やかな手の込んだ細工に見とれてしまい、食べるのが勿体なくなります。
伝統工芸品から着想したお菓子
お話を伺った渡邊さち子さんは4代目の若女将。
大学の卒論のテーマも「おやつ」について書かれるほど、美味しいものが大好きで、
食品商社や資生堂パーラーでマーケティング企画や商品開発のお仕事をされていたそうです。
東京出身のさち子さんは、結婚後もしばらくは東京に住んでいらっしゃいましたが、12年前に東京から山口へ。
そんなさち子さんが企画をして2016年に発売されたのが『大内もなたん』。
山口県の伝統漆工芸、大内人形をかたどった愛らしい最中で、
2018年の『グッドデザイン賞』のほか、さまざまな賞を受賞しています。
大内人形の慈愛に満ちた穏やかな微笑みが大好きなさち子さん、初めて見た時に一目惚れしてしまったそうです。
伝統ある大内人形と老舗和菓子店のコラボレーションは、山口の文化を継承していく上でとても画期的だったのではないかと思います。
『大内もなたん』に続いてさち子さんが企画をしたのがこちらの『にこたん糖』です。
『大内もなたん』は賞味期限が短いので、「日持ちがしてコンパクトな商品づくりをして、県外・海外の方にも大内人形を知っていただきたい」という思いから誕生した『にこたん糖』。
3cmほどの大きさの和三盆糖は、細部まで精巧に型取りがされています。
日本に数名しかいない木型師さんにお願いしたそうで、『にこたん糖』を通して木型のぬくもりが伝わってくるようです。
また、お菓子の台紙は姫の故郷の京唐紙や徳地和紙のバージョンもあり、パッケージはお菓子を食べた後に裏返してフレームとして再利用もできます。
細部にこだわった『にこたん糖』は優しい甘みが口の中に広がり、いくつでも食べられそう。
伝統を若い人にも
「長い歴史を持つものにはそれなりの意味や価値があります。若い世代にも本物の味を知ってもらいたいです」
そう話すさち子さん。
これからも伝統と創造を融合させながら、時代に合った和菓子を作り続けていかれることを期待しています。
上生菓子はもちろんですが、すぐに売り切れてしまう『ぼた餅』もお勧めです。
是非、一度ご賞味ください。