湯田温泉の新名所「こんこんパーク」に誕生。心温まるコーヒーを 山口市「APRICITY COFFEE」
湯田温泉に誕生した新たなスポット「湯田温泉こんこんパーク」。この2階に、小さなコーヒーショップがあります。
神奈川から移住してきた店主が丁寧に淹れるコーヒーが、この場所を訪れる人々の心をそっと包み込んでいます。遊びに訪れた時に、お風呂上がりに、心ほどける一杯はいかがですか?
元地域おこし協力隊員が念願のコーヒーショップ開店
2025年5月に新たな湯田温泉の賑わいの場として誕生した「湯田温泉こんこんパーク」(山口県山口市湯田温泉5-2-15)。
入ってすぐ目の前に広がる「こんこん広場」の右手に、2階につながる大きな階段があります。
そこを上がってすぐ左手側にあるのが、今回紹介する「APRICITY COFFEE(アプリシティ コーヒー)」です。
商品の受け渡しのみを行うカウンターだけがある小さなコーヒーショップです。
店主は、神奈川県出身の田中悠介さん。2022年に「地域おこし協力隊」の隊員として奥さまと共に山口市へ移住しました。協力隊として湯田温泉を盛り上げる活動をするかたわら、長年の夢だったコーヒーショップの開業に向けて少しずつ準備を進め、「こんこんパーク」と共に念願のオープンを果たしました。
定番のドリップコーヒーを中心に、注文ごとに一杯ずつ丁寧に淹れ提供するスタイル。その日の天気や気温によって豆のブレンドを微妙に調整しているそうですよ。
季節を感じるおすすめメニュー
早速、お店のおすすめを紹介します。まず、夏の看板商品のひとつが「フローズンコーヒーミルク」。
- フローズンコーヒーミルク 630円
地域おこし協力隊の活動で大学生と共に開発した「湯田温泉コーヒー牛乳」を使った一品です。お風呂上がりにはコーヒー牛乳、というのが昔からの定番ですが、このお店では、小さなお子さんを抱っこしたままでも楽しめるよう、片手で飲めるフローズンドリンクにしたという奥さまのアイデアが詰まっています。
「アフォガード」は、熱々のエスプレッソをバニラアイスにかけた大人のデザート。
- アフォガード 720円
ざくざくのチョコクッキーがアクセントになり、濃厚なのに飽きがこない味わいです。取材の日には、宇部からこの一品を目当てに訪れたご婦人が「本当においしい」と笑顔を見せていました。
そして、暑い夏に人気なのは「エスプレッソトニック」。
- エスプレッソトニック 630円
エスプレッソの深い苦味にトニックウォーターの炭酸の爽快感・清涼感が合わさり、ひと口飲むとクセになる涼やかなドリンクです。
そのほか、ラテはエスプレッソベースで、牛乳のほかオーツミルクも選べます。子ども向けのりんごジュースやクラフトコーラも取り揃え、親子で楽しめるのも魅力です。
さらに店頭では、自家焙煎のコーヒー豆(エチオピア1200円/100g、ブラジル1100円/100g)やドリップパック(250円)、湯田ミルク珈琲(2000円)、クラフトコーラ(2500円)などの販売も行っています。自宅でも「APRICITY」の味を持ち帰れるのが嬉しいですね。
冬の日差しの暖かさを目指して
田中さんとコーヒーの出会いは会社員時代。仕事の合間に飲む一杯のコーヒーが心をほぐしてくれた体験が原点でした。自宅で淹れるようになり、豆の焙煎にも挑戦。さらに転職先の京都で数多くのカフェに出会ったことで、コーヒーの奥深さに魅了されていきました。やがて「いつか自分の店を」と夢が膨らみ、自然の豊かな土地を探し求めてあちこち足を運びました。そして、偶然にも選んだ山口市は、ご両親の故郷でもあったのです。
「APRICITY」という聞き慣れない響きに由来を尋ねると、英語の古語で「冬の日差しの暖かさ」を意味する言葉だと教えてくれました。寒さの中でふと感じる光のぬくもり――その瞬間のやさしさや希望を表すこの言葉に、田中さんの想いが重なります。
「お客さんと一緒に季節を感じられる店にしたい」という願いを込めて名付けられたそうです。
コーヒーがつなぐ人と街
オープンから3か月が経ち、田中さんに感想を伺うと「お客さんの反応を直接聞けることが何より嬉しい」と笑顔で語ってくれました。
自分が作ったものを提供して喜んでもらえる。その一方で、大変さも少なくありません。しかし「自分たちがおいしいと思えるものを、流行にとらわれず提供し続けたい」と話す姿に、揺るぎない信念を感じます。
現在はこんこんパーク内に店を構えていますが、将来的には市街地から少し離れた自然豊かな場所に店舗を構えることが夢だそうです。親子連れでも、大人も子どもも気兼ねなく楽しめる空間をつくりたい――そんな未来を思い描きながら、日々の一杯を丁寧に届けています。
「山口はご縁に恵まれた街。だからこそ、これからもここで暮らしていきたい」。そう語る田中さんご夫妻のコーヒーは、まさに“冬の日差し”のように、訪れる人の心をそっと温めてくれます。