ものづくりの未来を切り拓く 山口市「ファブラボやまぐち」
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「ファブリケーション」という言葉を知っていますか?
「組み立て」「ものづくり」といった意味を持つ英語で、今、3Dプリンタを代表とする、デジタルデータを元にしてものづくりを行う「デジタルファブリケーション」の技術に注目が集まっています。
そんな技術を、開かれた場所で、誰でも体験できるというオープンな工房が山口市にあるんです。
今回はそこを取材してきました。
山口の古民家が生むデジタルものづくりの拠点
山口市の大殿小路に佇む古民家。
一見普通の古民家のようですが、こちらが、外観のレトロさとは裏腹に、レーザーカッターや3Dプリンタなどの最新ファブリケーション機材を揃えている「ファブラボやまぐち」です。
「ファブラボやまぐち」を運営する㈱アワセルブスの代表である河口 隆さんにお話を伺いました。
河口さんは宇部市出身で、システムエンジニアを経て、2011年にウェブ制作やシステム開発を手がけるアワセルブスを設立。
その後、2015年からはファブラボの運営も手がけています。
ファブラボって?
「ファブラボ」は、2002年にアメリカで始まった市民のためのオープンラボで、「自分たちに必要なものを自ら考え、自らの手でつくる、ものづくり人材の育成」を目指しています。
3Dプリンターやカッティングマシンなどの工作機械を備え、デジタルファブリケーション技術の利用機会を提供し、「使う人が使いたいものを自分で作る」ことの楽しさを学んでもらおうという施設です。
国内には現在18か所のファブラボがあり、地域ごとのネットワークを構築し、知識やノウハウを共有しています。
「ファブラボ」でできること
「ファブラボやまぐち」では、レーザーカッター、3Dプリンタ(2種類)、デジタル刺繍ミシン、ペーパーカッター、CNCミリングマシンが揃っています。
これらの機材を利用するためには事前に機材ごとに必ず講習を受ける必要があり、その後、予約をしたうえで自由に機材を利用できるようになります。
一番利用者が多いレーザーカッター
「ファブラボやまぐち」は小学生の夏休みの工作から趣味のものづくり、プロユースまで、幅広い層の方々に利用されていて、近年では、店主が自らお店の看板を作るなど、ものづくりに挑戦する人も増えているのだとか。
コロナ禍では県外に出られないために機材を求めてこちらに訪れた方もいらっしゃったようです。
ちなみに、筆者も以前、クッキーの型を受注販売している「ファブラボやまぐち」利用者の方に、オリジナルのクッキー型を制作していただいたことがあります。
「地域おこし協力隊」の文字がクッキーの表面に刻まれるようにした物で、制作にあたっては、3Dプリンタとレーザーカッターが使用されました。
今では、機材やソフトも使いやすくなり、始めやすい環境が整っているため、多くの方が利用しやすくなっています。
レーザーカッターやデジタル刺繍ミシンは、絵をスキャンしてパソコンに取り込んで加工するといったワークショップ的な活用も可能になっていますので詳しくは施設に問い合わせてみてください。
「ファブラボやまぐち」が目指すもの
ファブラボやまぐちではスタッフが機材を使って作ったアクセサリーや小物も販売しており、将来的には利用者の作品を販売したいと考えているそうです。
ファブラボを始めてから、山口情報芸術センター[YCAM]との関係が深まり、現在は山口市教育委員会との連携事業『やまぐち子ども未来型学習プロジェクト』を三者で展開。
この事業は2023年にはグッドデザイン賞・キッズデザイン賞優秀賞を受賞しました。
IoT化が進む中で子どもたちの学習をサポートするなど、教育事業での依頼も増加しています。
デジタルは現代の生活から切り離せない存在となりました。
オンラインでもオフラインでもデジタルクリエイティブを通してサポートし、誰もがものづくりができる環境を提供することで、山口から新しい産業や学びの場を創り出し、世界に発信することを目指して活動しています。
河口さんは利益よりも新しいアイデアが生まれるきっかけとして、継続していきたいと話しています。