ニューヨーク・タイムズでも紹介!凛としたうつわで暮らしに彩りを 山口市「水ノ上窯」
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2024年1月、アメリカの「NY Times」が「2024年に行くべき52ヶ所」を選出。
その中で北米やパリに次ぎ、山口市が3番目に取り上げられ大きな話題となりました。
記事では、瑠璃光寺五重塔などの市内の観光名所とともに、「洞春寺境内にある陶芸窯」として「水ノ上窯」(Mizunoue)が紹介されています。
今回は、世界も注目するこちらの窯の魅力をたっぷり紹介します!
お寺の敷地内で、ミニマルな作品づくり
山口市の中心部、山口県庁のすぐ隣にある「洞春寺」。毛利元就の菩提寺でもある古刹です。
その敷地内、本堂を正面に見て右手側の隅に今回ご紹介する「水ノ上窯」はあります。
ここで日々うつわを作っているのが山口市出身の陶芸家・舛井岳二さんです。
元々このお寺の納屋だった場所を工房兼ギャラリーとして改装し、2021年に窯開きしました。
工房の外壁には陳列用の棚があり、規則正しくうつわがディスプレイされています。
陶器や磁気のカップやお皿、鉢などのテーブルウェアが中心となっていて、あとは一輪挿しや壺などの花器も。
中国・宋の白磁や李氏朝鮮時代の白磁からインスピレーションを得た作品づくりを目指しているそうで、白をベースとし、無駄な装飾を削ぎ落としたミニマルかつ凛とした佇まいは、和洋問わずどんな料理や食卓、家具とも馴染みそうです。
機能性と美の両立
「水ノ上窯」の工房内は元々納屋というだけあって、天井の高いつくりになっています。
それを活かすように壁にはかなりの高さまで棚が備え付けられていて、完成した作品や制作中のうつわなどがずらり。
電動ろくろや電気窯も置かれていて、舛井さんはここで形成から焼き、釉薬がけなどの作業を一人で行い、およそ2ヶ月かけて作品を完成させているのだそう。
こだわりは作品の隅々までゆき届いていて、普段使いしやすく、手に持った時に軽さを感じられるよう、できるだけ薄く削っているのだとか。
日常に溶け込む機能性と美がしっかりと詰まっていることが感じられます。
萩焼の窯で技術を磨く
元々は仏像彫刻師を目指していたという舛井さんですが、ある時、萩焼体験に参加し、「時間を忘れるほど没頭した」ことから、陶芸の道を目指すようになったそうです。
知人のつてで萩焼の大屋窯に12年間住み込みで修業。ここで作陶の基礎や技術を学びました。
そして2020年、大屋窯を離れ、洞春寺の住職との出会いを経てここに工房を構えることになったそうです。
ただ、萩焼で培った技術に根ざしながらも決して「萩焼」のカテゴリにとらわれたくない、と舛井さん。
様々な土や釉薬を試し、その時の条件や火の入り方などで”偶然”生み出される肌合いや色味を楽しみながら日々作陶に打ち込んでいるそうです。
また、現在は電気窯と灯油窯の2種類を使っているそうですが、今後敷地内に薪窯をつくり、さらに表現の幅を広げていきたいと話します。
手に馴染む作品たち
工房は自由に入ることができ、そこで気に入った作品を買い求めることができます。
いくつかご紹介します。
まずは、窯の作品の中でも人気があるという取っ手のついた磁器のマグカップです。
- マグカップ 4,800円
こちらは透明釉を作り、白味をベースとしつつ光沢感のある作品となっています。
取っ手は人差し指と中指の2本がちょうどフィットする作りとなっていて、持ったときに見た目以上に軽さを感じることができます。
続いてはコーヒーカップ。ソーサー付きの作品です。
- コーヒーカップ(ソーサー付き) 5,800円
先ほどのマグカップと違いマット釉を使っているため、磁器の質感をダイレクトに感じることができます。
こちらは6寸(19cm)のお皿です。
- 6寸皿(19cm) 5,500円
透明釉が施されていて、種類を問わずさまざまな料理を盛り付けられそうですし、料理を引き立ててくれそうですね。
ちなみに筆者は透明釉のマグカップに一目惚れし、即購入。
早速家に帰ってコーヒーを入れて飲んでみましたが、軽さと共に口当たりの良さに驚きました。
よく見てみると、唇が当たる部分が少し窪ませてあると同時に薄く削られていて、これが飲みやすさにつながっているのだと納得。
デザインの中に細やかな心遣いが溶け込んでいて、長く大事に使っていきたいと感じさせられました。
その人柄に惹かれて
「NY Times」の「2024年に行くべき52ヶ所」に山口市を推薦した写真家のクレイグ・モド氏は、自身の公式ホームページで、「なぜ山口市を選んだか」について記しています。
それによると、2021年に山口市を訪れた際、「この街で多くの人に出会い、皆親切だった」としつつ、「水ノ上窯の前に立つ(舛井)岳二は親しみやすさにおいて抜きん出ていた」と称賛しています。
その後の文章でも、舛井さんについて、「話しやすい」「兄弟のように感じた」などと特別な思いを記しており、山口市の記憶の中でも舛井さんの人柄がひときわ強く輝いていることがわかります。
舛井さんとの出会いがあったからこそ、山口市がモド氏の中で特別な場所になったのではないでしょうか。
さいごに
今後は展示会などの活動を増やして、より多くの人の目に触れる機会を増やしていきたいと舛井さんは話していました。
気になる方はそういった機会を利用するか、ぜひ工房を訪ねて、舛井さんと話しながらいろいろなうつわを手にとってみてはいかがでしょうか。
工房は不定休になっていますので、どうしても、という方は概要欄に記載してある電話かメールで事前に連絡をとってから訪ねてみてくださいね。